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なぜF1のピットストップで順位が入れ替わる?アンダーカットとオーバーカットを徹底解説!

シトヒ
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F1のレースを見ていると、コース上での追い抜きがないにもかかわらず、ピットストップを境に順位が入れ替わっていて驚いた経験はありませんか。実は、F1のピットストップは単なるタイヤ交換の時間ではありません。そこでは、コンマ1秒を争う熾烈な戦略バトルが繰り広げられているのです。

この戦略の核となるのが「アンダーカット」と「オーバーカット」です。これらの戦略を理解すると、F1観戦が何倍も面白くなります。私がこの記事で、ピットストップがレースの勝敗を左右する「見えざるオーバーテイク」の仕組みを、初心者にも分かりやすく徹底的に解説します。

F1のピットストップで順位が入れ替わる仕組み

F1のレース戦略において、ピットストップは順位を上げるための最大の武器の一つです。その中心にあるのが「アンダーカット」と「オーバーカット」という2つの基本的な戦略です。どちらを選択するかで、レースの結果が大きく左右されます。

アンダーカット|新品タイヤでライバルを逆転する戦略

アンダーカットとは、ライバルよりも先にピットインして、新品タイヤの性能を最大限に活かして逆転を狙う攻撃的な戦略です。この戦略の成功は、シンプルなタイム計算にかかっています。

重要なのは、ピットインして新品タイヤで走る1周(アウトラップ)で稼いだ時間が、ライバルが古いタイヤで走る1周(インラップ)でのタイムロスとピットストップの時間を上回ることです。

アンダーカットのプロセス説明
インラップピットに入る直前の周回。ドライバーはマシンの限界までプッシュします。
ピットストップ約2〜3秒のタイヤ交換。ピットクルーの作業効率が鍵を握ります。
アウトラップピットアウト直後の周回。新品タイヤのグリップを即座に引き出し、全力で走ることが求められます。

アンダーカットを仕掛けられると、先行するマシンは翌周にピットインして対抗せざるを得なくなることが多く、レースの主導権を握りやすいのが特徴です。

オーバーカット|ライバルの状況を利用する戦略

オーバーカットはアンダーカットとは逆で、ライバルがピットインした後もコースに長く留まり、逆転を狙う戦略です。これは、特定の状況下で非常に有効な武器となります。

オーバーカットが成功する主なシナリオは2つあります。一つは、先にピットインしたライバルが周回遅れの集団などのトラフィックに引っかかり、ペースを上げられない場合です。その間に、自分はクリアな状態で走り続けてギャップを築きます。

もう一つは、ライバルが履いた新品タイヤが、最適な性能を発揮する温度まで温まるのに時間がかかる場合です。その隙に、温まった古いタイヤでペースを維持し、タイムを稼ぎます。特に、気温が低いコンディションや、タイヤに熱が入りにくいサーキットで効果を発揮します。

アンダーカットとオーバーカットの成否を分ける要因

アンダーカットとオーバーカットのどちらが成功するかは、単にピットのタイミングだけで決まるわけではありません。タイヤの性能、サーキットの特性、そしてレース中の様々な状況が複雑に絡み合って結果を左右します。

タイヤの性能|デグラデーションとウォームアップ

タイヤはF1戦略の王様です。その性能特性が、アンダーカットとオーバーカットの有効性を大きく左右します。

タイヤの性能劣化(デグラデーション)

タイヤの性能がレース中に急速に落ちる(デグラデーションが高い)場合、新品タイヤと古いタイヤの性能差が非常に大きくなります。このような状況では、早く新品タイヤに交換するアンダーカットが極めて強力になります。

タイヤのウォームアップ

新品タイヤが最適な作動温度に達するまでのウォームアップ速度も重要な要素です。特に硬めのハードタイヤは温まりにくく、アウトラップでペースが上がりません。このような場合は、温まった古いタイヤで走り続けるオーバーカットが有利になります。

サーキットの特性|コースレイアウトとピットレーン

レースが行われるサーキットの特性も、戦略の選択に大きな影響を与えます。

オーバーテイクの難易度

モナコやハンガリーのように、コース上での追い抜きが非常に難しいサーキットでは、ピット戦略が順位を上げるための主要な手段となります。そのため、アンダーカットやオーバーカットの重要性が一層高まります。

ピットレーンでのロスタイム

ピットストップで失われる時間は、サーキットのピットレーンの長さによって異なります。このロスタイムが大きいほど、戦略のリスクも増大します。ストラテジストは、コース復帰時にライバルの前に出られるだけの十分なギャップがどこにあるかを見極める必要があります。

レース状況|トラフィックと天候

レースは生き物であり、刻一刻と状況が変化します。トラフィックや天候の変化は、戦略の成否を分ける決定的な要因となり得ます。

クリアエアの重要性

アンダーカットを成功させるためには、ピットアウトした後に前方が開けた「クリアエア」の状態で走ることが絶対条件です。周回遅れの集団などのトラフィックに引っかかってしまえば、新品タイヤのアドバンテージは完全に失われます。

セーフティカーの影響

セーフティカー(SC)の導入は、それまでの戦略を根底から覆す力を持っています。SCが出ると、各マシンの差が縮まるため、アンダーカットで築いたアドバンテージが消えてしまうことがあります。逆に、オーバーカットを狙っているドライバーにとっては、SC中にピットストップすることでタイムロスを最小限に抑えられ、大きく順位を上げるチャンスとなります。

【実例】レースで見るアンダーカットとオーバーカット

理論を理解したところで、実際のレースでこれらの戦略がどのように機能したかを見ていきましょう。象徴的な2つのレースを例に、戦略の妙技を解説します。

オーバーカットの成功例|2021年モナコGP

モナコGPは、低いタイヤデグラデーションと難しいタイヤウォームアップ、そして追い抜きがほぼ不可能という特性から、典型的な「オーバーカット向き」のサーキットです。

このレースでは、メルセデスのルイス・ハミルトンがアンダーカットを試みましたが、新品のハードタイヤのウォームアップに苦しみ、ペースを上げられず失敗に終わりました。一方で、レッドブルのセルジオ・ペレスやアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルは、コースに長く留まるオーバーカット戦略を見事に成功させます。彼らはクリアエアを利用してハイペースで走行し、ピットストップを終えたハミルトンたちの前に出ることに成功し、大きく順位を上げました。

アンダーカットの成功例|2023年ハンガリーGP

ハンガリーGPが開催されるハンガロリンクは、追い抜きが難しくタイヤへの負荷が高いため、伝統的にアンダーカットが非常に有効なサーキットとして知られています。

2023年のレースでは、マクラーレンのチームメイト同士による戦略バトルが見られました。後方を走っていたランド・ノリスが、先にピットインするアンダーカットを敢行。完璧なピットストップと、新品タイヤでの猛烈なアウトラップによって、チームメイトのオスカー・ピアストリを逆転しました。これは、全く同じマシン同士の戦いにおいても、戦略がいかに決定的な差を生むかを示す好例です。

まとめ

F1のピットストップにおける順位変動は、アンダーカットとオーバーカットという緻密な戦略に基づいています。アンダーカットは新品タイヤの性能を活かした攻撃的な戦略であり、オーバーカットはライバルの状況やタイヤの特性を利用した好機を待つ戦略です。

どちらの戦略が成功するかは、タイヤの性能、サーキットの特性、レース展開、天候といった無数の要因が絡み合う複雑な計算の結果であり、絶対的な正解はありません。エンジニアとストラテジストは、膨大なデータを分析し、瞬時に最適な判断を下しています。

コース上の華やかなバトルだけでなく、ピットウォールで繰り広げられる「見えざるオーバーテイク」に注目することで、F1観戦はさらに深く、エキサイティングなものになります。次にレースを見るときは、ぜひ各チームの戦略にも目を向けてみてください。

著者情報
シトヒ
シトヒ
ブロガー

在宅勤務の会社員
趣味・得意分野
⇨スポーツ観戦:F1、サッカー、野球
⇨テック分野が好物:AI、スマホ、通信

姉妹サイト:MotoGPマニア

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